2016年1月14日木曜日

アルノー・デプレシャン監督『あの頃エッフェル塔の下で』


ル・シネマで。
アルノー・デプレシャン監督『あの頃エッフェル塔の下で』をみました。邦題のエッフェル塔なんて2シーンくらいしかでないけどね。Bunkamuraへきそうなおばはん客向けタイトルだから間違ってはないけれども、もっと幅広くみられてよい映画なんでこの邦題はダメだわ、印象に残らないし、なにみてきたんですか? ときかれてこのタイトルを口にするのがはずかしかった、すごくよかったのに。

たくさんをみなくなったため、わたしの映画の感覚なんてもはや死んでるだろうからかく意味が、とかおもうけれども、やっぱりいっとう好きなデプレシャンなんで、感想を。

『そして僕は恋をする』の続編、というかさらに堀りさげたようなはなし。ポールとエステルが出会ったあたりのことを、いまのポールが回想するっていう。『そしてー』みてなくってもそのままみられます。
『そして』はあまりに好きで、猿の死体こそ処理しなかったけれどもどろっどろなの同時進行がなされてて勝手に当時ダブらせてみてたんですが。『そしてー』のエステル役だったエマニュエル・デュボス、あの頃は美人というには違和感のあるあき竹城感、で、『キングス&クイーン』ではうつくしく完璧な女性のように描かれてて、こわいことにみてるうちにこちらもそうおもえてきてしまうっていう魔術があったわけですが、今回のエステル役の子ぉはTOPSのヴォーカルの子ぉに似てて、あのホームパーティーで踊ってる姿とかね、TOPSのはじめのMVでの瞳孔開いててやばいかんじ、すごく似てるなと。そして映画のなかでのポールの回想だからか、何度か遠慮なんてなしにみている側にその視線をむけてきて、うわっ、となる。

ちょうど2時間くらいとすこし短めにまとめられたなかで、ポールの初恋のはなしを回想するどころかデプレシャン自体の作品も回想するようなかんじもあって、『魂を救え!』のようなスパイな2部、親や祖母など家族についてのはなしは『そしてー』以降な、そういうのんがつめこまれてて、でもしつこくなくって、すごい。
そう、はなしの流れとは関係のない、唐突なよいシーンの挟み込みがあいかわらずで、スカートすとんなところとか、おなじなまえをもつロシアのひとのはなしとか、教授とのやりとり(眠ってるところに、なところはとくべつ)とか、とても。1部の説明のない暴力感とか。のぞき窓な画面に、画面分割なアクセントもあったりしながら、ときおりかなり暴力的にはさみこまれてて、そういうのんを散りばめつなげてなつくりかた、やっぱりとても好きで。

大叔母、教授、そしてメルボルンの “双子” の行く末だったりで、 家、田舎、パリからもっとセカイへ開かれる瞬間があって、すごい。



絵をたとえるところがあの“ポール”によくある饒舌さがあふれでてくるかんじ、たまらなくここちよい。そう、2部3部のポールの若かりし頃を演じてる子ぉは顔面がにてないけれど、話し方とか声とかがマチューのようにきこえてきて、むしろいまのポールを演じてるマチューよりもマチューっぽかった。最後に空気もよめずにキレてしまうところは最高だったけれど。そしてスパイ映画や西部劇で学んだルールに反してるとかいってキレるのが頭おかしくってステキ。

おもいだすにはひりひりしてしまう恋愛のはなしを、ぽんぽんと印象に残るエピソードとシーンでリズムをとりながら語ってゆくかんじはやっぱり大好きで。ヒップホップが好きっていうのもわかるし、実際つかっていたりもするし。
とんできた紙切れにかかれたギリシア文字から想起するシーンが光に満ちててうつくしくって、涙でました。やっぱりデプレシャン最高です。
きょねんの夏まえのんが、デプレシャンだけれどいまいちおもしろくなさげと見逃してしまったんだけれど、みようか。

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